UXへの取り組み

UXを大切にしているSnapDish様にインタビューしてきました。

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Q. まずはSnapDishについて教えてください。

A. 料理をより楽しくするサービス

毎日料理をする人の中には台所で孤独を感じている人達がいます。SnapDishではそういう人達にとっての“料理”をより楽しいものにするサービスです。

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Q. 「早速ですが、SnapDishではどのようにUXを設計しているのでしょうか?」

A. まずは自分が当事者になってみる

弊社は男所帯で女性社員は1名だけなので、日常的に料理を作る機会が多くありませんでした。まずはユーザーと同じ目線に立つため、創業の地である練馬を離れ、「主婦が住みたい街No.1」である吉祥寺に引っ越してきました。主婦の方々の生活をなるべく真似しようということで、毎日買い物に行ってお昼ご飯を会社のみんなで作りあっています。このような日常の経験がアプリのユーザー体験(UX)向上にも直結していると感じます。やはり、自分が問題に直面していないと本気で解決しようと思うのは難しいので。

Q. 具体的にはどのような点を意識していますか?

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A. ユーザーが本当に必要としている情報を見極める

例えば、アプリ内の「ジャンル分け」で、ユーザー目線が活きていると思います。日々料理をすることで気付いたのですが、料理は毎日のことなので「次に何を作ればいいだろう」って困るんですよね。SnapDishでジャンルを見てみるとレシピサイトでは下部に配置されている“お弁当”というジャンルが一番上に表示されます。お弁当は毎日作るので、料理のネタで困っている人が多いのです。また、レシピサイトでは「和食」「洋食」と料理のジャンル毎に分けられているのですが、SnapDishでは「ヘルシー」「お昼ご飯」「簡単料理」など、料理をするシチュエーションや目的がジャンル名になっています。こういった視点は、自分達の料理の経験に基づくものです。

Q. 自分達で料理をしていても、やはり主婦とは違う観点が出てきてしまうと思うのですが、そういう部分はどのように補っているのでしょうか?

A. インタビューや問い合わせからユーザーの声を拾っています

ユーザーインタビューを良くするのと、問い合わせに対してはスタッフ全員で共有しすぐ返信するようにしています。問合せに対して繰り返し丁寧にやり取りさせて頂くと、ユーザーから提案して下さることも多々あります。そういった声を聴いて日々改善しています。例えば、人気になってフォロワーが増えてくると、投稿するたびに膨大なコメントが来るので、その返事を書くのが大変で気軽に投稿できないという悩みです。この問題を解決するために、留守番電話のテキスト版のような機能があればいいんじゃないかというアイディアが出てきています。

Q. ユーザーの声を全て聞いていたら、改悪になる可能性があると言われたりもしますが、どのように判断されているのでしょうか?

A. 意見の絶対数とユーザーのアクティブ率が指標です

たくさんのユーザーがいて、同じ意見を10人から頂くということはあまり多くないので、10人から集まる意見というのは本気度が高いと判断しています。あとは、意見の総数としては少なくても、ヘビーユーザーからの声はきちんと聞かないといけないなと考えています。ヘビーユーザーの意見はとんがった方々の意見かもしれませんが、コンテンツ共有型のサービスというのは2,3割の上層部が非常に活発で、そのサービスの一番ホットな部分になっていることが多いので、そういう方々の意見は数に限らず参考にさせて頂いています。けどやはり最終的には、ユーザーが本当に何を求めているのかを判断するのが大事です。

Q. SNSという観点から何か気をつけていることはありますか?

A. サービスの成長に合わせてUXを見直し続ける

SnapDishの場合、最初はアプリを開くと、まずカメラが起動していました。今は写真の投稿や閲覧のメニューが表示されるホーム画面が起動します。これには2つの理由があります。当初は今ほどクチコミでの流入は大きくなく、写真加工のカメラアプリとしてストアの検索からの流入が多かったので、そのニーズを満たすためというのが一つ。もう一つは、「料理が楽しくなる」ということをいち早く体験して欲しかったためです。アクティブなユーザーが多いので、写真を投稿するとすぐにたくさんの反応が返ってきます。それが「料理が楽しくなる」というユーザー体験(UX)につながり、新たなアクティブユーザーへと育っていくので、まずは写真投稿をしてもらうように設計していました。しかしサービスの成長とともに、ユーザーの質が変わってきて、コミュニティをメインで楽しむ人が増えてきました。そこでカメラ起動をやめ、日々使ってくれるユーザーのために今のホーム画面に変更しました。

Q. UIを変更した時にユーザーからの反発はなかったのでしょうか?

A. 反発もあったが貫いた

変更してしばらくは、もとの方が良かったという問合せを頂きましたが、そこは押し切りました。今では、それがスタンダードになっています。

Q. その辺の判断って非常に難しいような気がするのですが、その場合は何故押し切れたのでしょうか?

A. 運営が提供したいUXを明確に持っていたから

そうですね。そこはサービスの「時間」と「規模」を意識しています。その機能自体は良いとしても、それをリリースするタイミングが大事です。弊社はどんな機能が加わっても、根幹はコミュニティサービスなので、コミュニティの規模に合わせたUXの変化には適応する必要があると思っています。例えば、SnapDishはつい先日2周年を迎えたのですが、開始からの2年間、会員登録はメールアドレスでしかできないようにしていました。それは他のSNSと切り離して、SnapDishの中だけで安心して楽しめるという文化をまず作りたかったからです。もしここでFacebookやTwitterの連携をしていると、写真を加工して他のメディアに投稿する写真加工ツールとして認識され、コミュニティは発達しなかったかもしれません。但し、その時も登録が面倒だという声はあったので、やはり運営側が「こういうUXを提供したいんだ」という明確なビジョンを持って、ユーザーと対話することが大切だと思います。

Q. では、ソーシャルアカウントでの連携を可能にさせたのもコミュニティが次のフェーズに移ったということなのでしょうか?

A. コミュニティの風通しを良くするため

はい、あるタイミングからはコミュニティが煮詰まってくるので、それほどロイヤルティが高くないというユーザーを取り込む必要性があると思います。

Q. コミュニティが煮詰まるとは、具体的にどういう状態なのでしょうか?

A. 新規ユーザーが参加しにくい状態です

特定のグループが出来て、決まった人だけのコミュニケーションが発生する状態を指します。特に閉鎖的ということではないのですが、新しい人が入りにくい環境になってしまいます。また、本当は良い料理があるのに、それが埋もれてしまうということも考えられます。例えば、SnapDishでは人気の料理を表示する仕組みがあります。古株のユーザーはフォロワーが多くスコアが上がりやすいので、通常のアルゴリズムだと新規ユーザーの投稿の露出の機会がどうしても少なくなってしまいます。そこでSnapDishでは、新規ユーザーやリボーン(復活)ユーザーの投稿の方が表示されやすくなるよう設計しています。

Q. では機能の追加や削除については、ユーザー目線に立って、コミュニティの成熟度を観察しながら行っているということでしょうか?

A. 「遊び」を持たせてこそコミュニティが活性化する

はい。しかし、やはり難しいです。コミュニティのサービスというのはある程度の遊びの部分がないと、窮屈になってしまい居心地が悪くなると思うんですよ。感覚値ですが、遊びが8割あって残りの2割の価値があがると考えています。SnapDishでは投稿時にコメントやジャンル指定などの機能はありますが、写真さえあれば料理名がなくても投稿できるようにしています。CGMであれば情報をある程度統一する必要があるのですが、SNSって基本自由じゃないですか。だからこういう風に幅を持たせて、SNSの自由度を保っています。そうすることがユーザーの問題を一番解決できると信じています。写真だけがいっぱい集まってもムダじゃないかと言われるかもしれませんが、その遊びありきでコミュニティが形成されている可能性があるので、機能の追加や削除には気を遣っています。

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